白井君の慰め方
つまり何もしていないって事でよろしいのだろうか。…じゃあ、なんで…?
「嫌だった?」
「え?」
「俺が待ってたの」
「い、嫌な訳ない!」
「そっか、良かった。なんか早く会いたくなって」
「…うん?」
「なんか昨日からずっと、嬉しくて浮かれてるんだよな」
そして、ニコッと人懐っこい顔で笑って見せた白井君は、「行こう、流石に遅れるから」と、自然な流れで私の手を引いた。自然な流れで…自然な、流れで?え?自然な流れとは?え?白井君が私の手を?手を…繋いだ?え?いや、私、そんな…っ、そんなっ、
「これは夢だ!!!」
教室の前で彼と別れてからの記憶は無い。しかしようやっと自分の身に起こった出来事を理解した所で私は意識を取り戻した。それはホームルームが終わり、一時間目すらも終えたところだった。
「そうか、なんだそういう事か、可笑しいと思ったんだ」
「可笑しいのはあんただバカ」
「あいてっ」
バチンと平手で頭を叩かれ、ハッとした。痛い…という事は、
「これは現実…」
「それ以外何があんのよ」
「じゃあどういう事…?まさか、今日が人生最後の日…?」
起こってしまった良い事のレベルが私の人生に追いついていない。幸福過多で明日、私の身に何かが起こる気がしてならない。
「ううっ…しかし悔いはない…っ」
「ねぇほんと大丈夫?」