白井君の慰め方

流石に本気で心配し始めた友人に、今日起きた素晴らしき出来事をお伝えした。私に会いたいが為に登校時間のギリギリまで待っていてくれた事。会いたかったと初めて見る可愛らしい笑顔で言ってくれた事。教室の前まで手を繋いで送ってくれた事。思い出すだけで苦しくなる胸を抑えながらギリギリの命を振り絞って語った。幸せを語った。そんな私を友人は可哀想な目で見つめていた。

「それは流石に夢だわ」

残念だけど、相手があの白井ならば100であり得ないと、慰めるように肩にポンと手を置かれる。そして、「ごめんね、もっとちゃんとあんたの話聞くようにするね」なんてらしくない言葉も頂いた。そこまでくるともうなんだか、そうだよね、あの白井君だもんね、やっぱり夢だよねと、私も納得してしまった。あのそういうのは苦手だと公言している白井君に限って、こんなにスマートかつ積極的かつ大胆な行動に出る訳がない。きっと私の願望が見せた幻だったのだ。

ーーと、答えを出したその後の昼休みの事。昨日に引き続き環境委員の仕事がある私は、ジャージに軍手にゴミ袋を携えた格好で絶望草むしりに勤しんでいた。
今日は朝の出来事という名の白昼夢を思い返しては頑張れる良い一日だ。おかげで草むしり中も脳内はウキウキしていられて、鼻歌まじりですらあった、そんな時だった。

「ここだったんだ」

急に声を掛けられた。隣に同じようにしゃがみ込んだその人が私の顔を覗き込んできて、その彼と、目が合った。

「…え?なんで?」
「昨日、明日もやる事になったって言ってたから」
「あ、うん。言った。言ったね。言ったけど、え?」

なんで??

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