白井君の慰め方

ここでのなんで?とは、なんでここに居るの?の意味だ。決して早くどこかへ行っての意味ではない。こんな事を聞いて勘違いが起こる可能性は捨てるべきなんだけど、それでも結局気になってしまった。決して迷惑なんだけど、の意味では無い。なんで昼休みのお供に私を選んでくれたの?の意味である。好意的な意味での『なんで』だ。が、大体こういうのは伝わらない。

「用が無いのに来てごめんね」
「いやそんな!そんな事はないよ。そういう意味じゃなくて」
「じゃなくて?」
「……」
「……」
「えっと」
「?」

そして、しっかりその疑問を口にするのはとても恥ずかしい。思い上がりも甚だしき事態に陥る可能性大なので、とても口にしづらい事だけど、でも白井君を傷付けるよりはとてもマシ。そう、とてもマシ!

「ま、まさか、私に会いたかったから来てくれたのかなと」

緊張で思いのほか絞り出すような声になってしまったけれど、そんな思いなんてこれっぽっちも気付かない白井君は、あっさり「うん」と、頷いた。そして目を丸くする私にようやく気付くと、照れ臭そうにまたあの夢と同じようにニコッと微笑みかえしてくれた。

だから私も笑った。つられて笑った。というか、笑って誤魔化すしかないほど、頭の中はパニックだった。もしかしてだ。もしかして、

「これは夢?」
「夢?」
「あ、いやなんでも無いです」

じゃないならつまり現実…でもそうなると朝の妄想と酷似している…え?まさか朝のあれも夢じゃない?まさか!いやだってそんな、なんで?あれ?わ、分かんない。何がなんだっけ?分かんない!あれ?今は昼休みで、

「し、白井君、今日はゲームしなくて良かったの?」
「うん」
「でも普段外に出たりしないよね?大丈夫?」
「大丈夫って…大丈夫だよ」
「な、なんで?」
「……」
「なんで平気なの?なんで来てくれたの?な、なんで今日に限って??」
「……」

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