白井君の慰め方
その時だった。ポケットに入れてあった私のスマホが震えた。
先輩と居るのにスマホを出すのは失礼かなと思ったけど、その先輩がスマホから目を離さないのだから私が出した所で気にもしないはずだ。落ち込んだ気持ちでろくに画面を確認もせずに通知をタップしロックを解除すると、パッと映し出されたメッセージ画面に心配そうな顔をするネコのスタンプが表示された。あ、このスタンプ持ってるやつだ、なんて無意識のうちに確認すると、また一つ。今度はびっくりするネコが送られてきて、もう一つ、両手を上げて大喜びするネコも送られてきた。
なんだなんだとようやく差出人を確認すると、
『これ俺も買ったんだー』
『楓ちゃんが使ってて可愛かったから』
『おそろいだね』
次々に送られてくるメッセージに驚いて顔を上げると、いたずらが成功したような顔をして笑う先輩と目が合った。そう、ネコ達の差出人は目の前の先輩だった。先輩はまたスマホに視線を落とすと、もう一度私のスマホが震えてメッセージの受信を知らせる。
『これは俺のお気に入り』
『沢山使って』
そしてプレゼントとして送られてきた、今度は先輩がよく使ってるウサギのスタンプ。
「え!あ、先輩コレ、」
「何かあったらコレで連絡ちょーだいね」
顔を上げると、さっきよりも一歩近づいていた先輩と至近距離で目が合った。先輩で一杯になった視界に息をのむと、頭にポンッと手を置かれた重みを感じる。
「俺の事考えてる楓ちゃんって可愛い」
ニコッと笑った先輩は、車内の電光掲示板へと目をやった。もうすぐ次の駅に到着する。
「お、移動しねぇと。じゃあまたね」