白井君の慰め方
だから好きでも付き合いたくないって思っていたはずなのに、私はバカだからその場の感情で頷いてしまった。こんなはずでは無かったのに、これは一番避けたかった事なはずなのに、私が白井君と付き合うなんて、
「相原さん?」
「なっ、なに?」
ダメだ、また一人の世界に入っていた。慌てて白井君の方を見ようとして、目が泳ぎようになるのをグッと堪える。すると白井君は何故かキョトンとした後、興味ありげにジッと私を見つめてきた。え?なに?
「ねぇ。もしかして緊張してる?」
「っ…」
秒でバレた。ジーっと見つめてくる視線が痛い…穴が空きそうだ。何かを探すような、期待するような、そんな私の中身を探る視線が突き刺さるようで、
「な、なんか…上手く話せなくなっちゃって…ごめんなさい」
もうこれは素直に白状する事にした。白井君も知っているであろう、付き合ってから現れる情けなくて自分勝手な私がこれだ。でもこれを隠してすれ違うのは違う事をもう知っている。ちゃんと白井君は聞いてくれるし、もうどうせバレてるのなら言ってしまった方が良い。付き合った途端に面倒臭い私でごめんなさい。人格変わりすぎで意味分かんなくてごめんなさい。良いところこれっぽっちも無くてごめんなさい。
「俺に緊張するの?」
「…うん」
「もしかして、先輩みたいに?」
「……うん」
「……」
「ご、ごめんなさい…」
「……」
あぁ、どうしよう。返事をしてくれない。白井君と目が合わせられない。すごくこっちを見ているのは分かってるんだけど、何故か怒ってそうでもない感じなんだけど、でもどうしても気まずくて…無言の時が、どんどん重くのしかかる。