本命同盟
フィルターがかかったような暗い景色が目の前に広がる。


「ごめんね・・・。ほんとはもう少し、一緒に、いてあげたかった、んだけど」


苦しそうに、私の手をぎゅっと握った。


優しい瞳が大好きだった。


そばにいてくれたあの人がもうすぐここをいなくなる。


また、一人になる。


また、おいていかれる。


「だい、じょぶ。私はいつも、あなたのそばに、いる、から」


最後に見せた大好きな、大好きだった笑顔が頭にこびりついて離れない。


お葬式の時、とても社交的で温厚な性格だったあの人は百人を超える人が参列する盛大なものになった。


葬儀屋さんからは、‘‘一般人でこれほど大規模な葬儀を見たのは初めてです’’と驚かれていた。


みんながあの人のことを好きだった。


誰よりも優しくて、誰にとってもそこが居場所になるようなとても、温かい人だった。











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