二人を繋ぐ愛の歌
「さあ、聞かせてもらうわよ?昨日のあれは何!?あの人は誰!?」

陽人からライブチケットを貰った次の日。
昨日の話を聞きたくてうずうずしていたらしい遥は珍しくパソコン業務も早く終わらせ定時で上がると、会社から少し離れた遥オススメの居酒屋に沙弓を連行した。

椅子に腰を落ち着けた瞬間に身を乗り出して昨日の事を問いただされた沙弓はその勢いに思わずのけ反ってしまった。

「えっと、あの人は【多幸】のお弁当の配達の手伝いの時に知り合った人で……昨日のあれは……」

“あの人とは微妙な関係で、南尾さんが私に好意があるから気を付けろって忠告されました”なんてどんな自意識過剰だと思われそうで自分からはとても言えなかった。

昨夜陽人に無理矢理あの場から連れ出されたからか、今日仕事中に南尾と一度だけすれ違った時には何か言いたげな視線をじーっと向けられてしまった。

南尾が昨日あんな言動をしたのが陽人の言う通り沙弓へ気があるための行動だったのかなどいくら考えても分からず、沙弓はモヤモヤした気持ちを払拭するかのようにパソコンの入力へ全力を出したのだった。

「私が見たところ、南尾さんは沙弓に気があるんじゃないかなって思うのよね。
で、あの男の人も勿論沙弓に気があると……」

「それは……実はあの後あの人にも言われた……」

第三者の目から見てもそう見えるのかと沙弓は慣れない状況に手をモジモジとさせると遥はじーっと沙弓の様子を見てから徐に口を開いた。
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