二人を繋ぐ愛の歌
「ねえ、あの人がこの前沙弓が相談してきたキスの人だよね?」

「言い方……っ!それにキスって言っても手の甲だし……」

「何言ってんのよ。
どこにしてもキスはキスじゃないの」

そう呆れた眼差しで言われると沙弓は言い返す言葉もなく肩を落とすことしか出来なかった。

こんなことならこの前陽人との事を相談しなきゃ良かったと後悔するが、やはり相談しなかったら今も混乱したり悶絶したり挙げ句の果てに思考放棄していただろう事を思うとやっぱり相談した方が良かったのだろうと結論付けた。

「沙弓には悪いけど正直、もう少し格好良い人を想像してた……だって、手の甲にキスするようなキザな人だもん」

そう言われてプライベート姿の陽人を思い出して苦笑すると、遥はそのまま言葉を紡いだ。

「あの人のこと知らないけど、ビジュアルで言えば南尾さんの方が沙弓に合ってると思うな。
昨日の人、頭ボサボサだし、前髪長いし、顔隠してるし目も見えないじゃない?すごく暗そう……」

「そんなことないっ!!見た目はそう見えるかもしれないけど、中身がとっても格好良いんだからっ!!」

遥の言葉に我慢できず、思わず立ち上がり大声で反論した。

目の前で驚きのあまり限界まで目を見開いている遥と、何だ何だとこっちに注目する店内の客と店員。
ハッ!!と我に返ると大人しくさっきまで座ってた椅子に再び腰かけ小声で遥に謝ると、遥は頬杖をついてニヤリと笑みを浮かべた。
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