二人を繋ぐ愛の歌
「え、何で?明らかに二人両想いじゃない。
後はどっちかが告白するだけでしょ?」

「いろいろ事情があって……とにかく、まだ付き合うとかそんなのはいいの」

そうキッパリ言うと遥は不思議そうに首を傾げた。

陽人はアイドルの頂点に立つ野望が達成出来るまで誰とも付き合うつもりはないとはっきり言っていたし決定的な言葉……“好き”とか“愛してる”とか言う言葉も言えないと言っていたけれど、それでも確かに想ってくれていると分かる言葉をくれて、忙しい合間を縫って会いに来てくれたりと行動で示してくれる。

それだけで十分なくらい今は満たされているのだから、暫くは明確な関係でなくても良いと思えている。
沙弓は改めてその事を考えると柔らかく微笑んで遥を見た。

「私は今のままでも十分なの」

「そんなものなのかしら……。
まあ、南尾さんを狙うライバルが一人減ったんだから良しとするわ」

そう言って笑う遥に沙弓は思わず目を丸くした。

「え?遥って南尾さんのこと……?」

「違う違う、別に南尾さんに恋愛感情はないわよ?
でも、高学歴、高収入、顔も良くて将来出世間違いなしのハイスペックは今から目をつけておかないとね」

そう言ってウインクする遥に一瞬呆気にとられると、沙弓は目の前にあった焼き鳥を無言で手に取って口に運んだ。

世の女性は怖いと同じ女性ながら思わずにはいられなかった。
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