二人を繋ぐ愛の歌
「何言ってるんですか。
俺はどのライブでも気合い入れてやってますよ」

「ハルト君がいつも真剣にライブに取り組んでるのは知ってますよ。
でも、今回はそれ以上に気合い入ってるなってみんなで言ってたんです」

「何でですか、指示が細かかったですか?」

冗談めかして笑いながらそう言うと、それこそいつもの事でしょう?と笑われた。

「何て言いますか、いつもよりももっと魅せるなぁって。
演出も歌もダンスも、今までとどこか違う気がするんですよ……上手く言えないんですけど、良い方向に」

そう言って笑うスタッフにハルトも笑顔を見せるとシャワールームの前で立ち止まった。

「そう言ってもらえると、もっとやる気が出ますね。
でも、どこか違うとしたらそれはスタッフの皆さんが支えてくれるからでしょうね。
皆さんがいるから、俺達はこんな風に未だに成長できるんですよ」

「……その言葉、本番前に是非みんなの前でもう一度言ってあげてください。
みんな喜んで本気で支えますから」

「いやいや、普段から本気でお願いしますよ。
じゃあ、また後で」

「はい、また後で」

始終にこやかな笑顔のままで話し終えるとハルトはシャワールームへ入り、リハーサル用の衣装を脱いで小さな個室がいくつも並んでいるその内の一つに入るとレバーを下げて頭から勢いよく水を被った。
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