二人を繋ぐ愛の歌
リハーサル後の汗だくになった体はまだ熱を持っているかのように熱かった。
冷たい水を全身に浴びて熱を冷ましながら、ハルトはスタッフが言っていた言葉を思い出していた。

さっきハルトが口にしたスタッフの支えは勿論の事だが演出も歌もダンスもいつもと違って見えたのは、他ならぬハルト自身に今までにない変化が訪れたからだ。
そして、その変化の理由に気付いているのはハルト自身と勘の鋭い朝陽くらいのものだった。

沙弓への想いが募れば募るほど、ハルトは自分の歌やダンスが変わるのを感じた。
以前沙弓が言っていたKaiserとの違い……“歌にこもってる想いの強さや種類が違うような気がした”と言う言葉が今なら身に沁みて分かる気がした。

「……ユウナが知ったら怒りそうだな」

何せユウナは野望を達成してアイドルの頂点に立つまでは、婚約者と同棲はしていても結婚はお預け状態なのだ。

もちろん今まで作曲やライブで手を抜いたことはなかったし、感情をこめてなかったのかと言われれば、それは違うと即答できる。

それでもやはり、大切な人がいなかった時のハルトが歌う恋の歌は、本気で恋をしたことのある人からすればどこか薄っぺらかったのかも知れない。

そんなハルトが沙弓と出会ったことによって歌詞も曲も歌も、ライブでのパフォーマンスでさえも今までと違うと言われるまでに変わった。

沙弓のハルトに対する影響力は凄かったと言っても過言ではなかったのだ。
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