二人を繋ぐ愛の歌
暫くしてから個室に戻ると、遥は何故かスッキリした顔をしていた。
絶対怒られると思っていた沙弓は虚をつかれたように目を丸くしたが、そんな沙弓の様子に気付いた遥はさっきと違って機嫌良く笑った。

「おかえりー」

「ただいま……どうしたの?」

「どうもしないわよ?さ、早く食べて呑もう!」

「え、遥はそれ以上呑まない方がいいよ」

化粧室に言っている間に何があったのか、さっきとは打って変わって上機嫌になった遥に首を傾げながら沙弓は元の場所に腰を下ろすと、それを見計らっていたように遥が徐に口を開いた。

「とりあえず会社の人達は私に任せて、沙弓は南尾さんをなんとかしなさい」

「なんとかって……?」

「あまりにもアプローチがしつこいなら、迷惑ですって言うのよ。
同僚としての一線を越えようとしてくるなら、それくらいハッキリ言っても問題ないはずよ?まあ、沙弓に少しでも南尾さんに気があるって言うなら話し別だけど」

そう言われて沙弓は思いきり首を左右に振った。
その様子を見た遥は小さく笑うと頬杖をついて焼き鳥を口に運んだ。

「まったく……あの無口なダサメンのどこがいいんだか……」

「え?何か言った?」

「なぁんにも?さ、明日も仕事なんだから、いっぱい食べて頑張らないと!」

小さく呟かれて聞きとれなかったが遥はもう一度言うつもりはないらしく、言葉通りどんどん食べ始めてしまった。

疑問に思ってる沙弓の近くに鞄に入れていたはずだったスマホが何故か机の上に起きっぱなしになっていたのだが、酒を呑んでいたからか沙弓がその違和感に気付くことはなかった。
< 151 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop