二人を繋ぐ愛の歌
「何せ、ちょっとした情報から妄想を爆発させて、噂話に尾びれと背びれをつけて話回ってくれるからね」

「……ちょっと待って、もしかして昨日一瞬で南尾さんとの事が知れ渡ったのも……」

「十中八九あの子が原因ね」

頼りになると言うよりどちらかと言えばトラベルメーカーじゃないかと沙弓は突っ込みたくなったけれどグッと我慢した。
迷惑な噂を広めるのもその人ならば、多少の誤りはあってもその噂を払拭して正しい話を広めるのもその人なのだ。

沙弓は無言で額に手を当てて俯き、深く息を吐くと少しだけ顔を上げて遥を見た。

「とりあえず、仕事はやりやすくなるかもだからありがとう。
でも、勝手な妄想を付け加えた噂話はほどほどにしてってその人に伝えといて……」

「了解。
今度その子を説教するつもりだからその時に言っとく」

胸を張ってそう言う遥に苦笑して仕事の準備を始めようとすると、遥の口から出てきた次の言葉に思わず手の動きを止めた。

「陽人さんには会社で南尾さんを遠ざけるために噂を流しますって許可取ってるから問題ないし、後は二人が本当に付き合って南尾さんが付け込む隙を無くせば……」

「陽人……?」

聞き間違いかと思いながらも遥を見て出てきた名前を復唱すると遥は、ん?と首を傾げた。

「陽人さんって言うんでしょ?あのダサメンの人。
なんか理由があって付き合えないって言ってたけど、会社では……」

「そうじゃなくて、何で遥が陽人の名前知ってるの?」

昨夜陽人の名前を出しただろうか?陽人の正体は?

沙弓自身酔ってはいなかったけどポロッとどこかで話してしまったのだろうかと内心焦っていると、遥は沙弓の言いたいことを察してニヤリと笑みを浮かべた。
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