二人を繋ぐ愛の歌
「もう……っ!
だからそう言うこと言わないでってこの前も……」

『電話でしか言えないから言わせてほしいとも言ったでしょ。
それより、お互いあまり時間がないだろうから単刀直入に聞くけど……南尾の事はどうなった?』

「あ……」

甘い声は一瞬で消え去り、真剣な声色になった陽人に沙弓は小さく声を漏らして固まった。

遥が酔っぱらって勝手に電話に出たこと、その内容、そして今の会社での状況。
話さなければいけないことがたくさんありすぎて、限られた少ない時間の中でどう話せばいいのかと考えていると、悩んでいる沙弓を察したのか陽人が口を開いた。

『南尾が沙弓にアプローチし始めたのは、この前電話に出た女性が教えてくれたから知ってる。
両想いの癖に早く付き合わないから隙をつかれてこんなことになるんだって怒られたよ』

「あ……えっと、ごめんなさいっ!彼女、あの時すごく酔ってて……そもそも電話が鳴った時に私がいなかったから……」

『いや、初めはビックリしたけど言ってることは正論だし、何より南尾の件に関しては沙弓から言ってくれなかっただろうから逆に良かったよ』

「……でも、失礼な事を言ったかもしれないって……陽人との会話の内容、あまり覚えてないみたいで……」

『あれは会話じゃなかったな……一方的に彼女に怒られて、話す暇を与えてもらえなかった。
あんなに怒られたのは久しぶりだ』

あの時の遥は本当に何を言ったのか、陽人がクスクス笑いながら言った言葉にサーッと血が引きそうになった。
< 163 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop