二人を繋ぐ愛の歌
「えっと、そしたら南尾さんが自分にもチャンスが欲しいって……自分なら私の気持ち次第ですぐに付き合えるって」

『確かに、俺より南尾の方がすぐに付き合えるだろうな』

沙弓の言葉に反論することなく肯定する陽人に沙弓は胸の辺りの服をギュッと掴んだ。
否定してもらえなかった時にズキッと胸が痛んだ気がして、小さく首を横に振ってから言葉を続けた。

「陽人とまだ付き合ってないならチャンスが欲しいって……。
本気だから、お試し期間をくれないかって言われて」

『それ、返事はしたの?』

「すぐに断られたらショックだからって……。
今度のShineのライブに一緒に行く約束したんだけど、その時まで考えておいてって言われて……」

『……ライブに一緒に行く?』

そこで初めて陽人の声が少し低くなった気がした。

「ねえ、それって二人きりじゃないよね?」

「え……二人だよ?他に来る人は上司とか目上の人だし、お互い初めてライブに行くから一緒だと助かるねって……」

『どうして好意を寄せてる男にそういう隙を作るかなぁ……』

溜め息混じりに言われた言葉に沙弓は自分の警戒心の無さに怒らせてしまったかと焦った。
けれど、勝手も知らないライブ会場に一人で行くのは不安だし心細いのは本当なので、どう言おうかと思っていたら陽人が再び溜め息をついた。
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