二人を繋ぐ愛の歌
『大体、何で両想いなのに付き合えないのよっ!そっちの都合?知らないわよっ!そんなことだから他の男に隙をつかれてややこしいことになるんじゃないのっ!!
付き合えないなら付き合えないで、沙弓をあんたに縛るなっ!!』

電話越しに叱り飛ばされたその言葉は思いの外、陽人の心に突き刺さり、陽人は強く手を握りしめた。

中途半端な関係が沙弓にどれだけの苦労と心配をかけるのかは想像に固くなく、それを強いてしまっているのは紛れもない自分なのが心苦しかった。

『沙弓は理由があって付き合えないって言ってたけど、どんな理由があるのよ?いい大人が付き合うのに誰かの許可がいるとでも言うの?』

許可はいる。

事務所に沙弓の事を話して付き合う許可を貰わないといけない。
……仮に駄目だと言われても言うことを聞く気はないけれど……。

『ねえ聞いてるの?いつまで黙り続ける気よ?』

ずっと無言でいたからか痺れを切らした遥が不機嫌な声で問いかけてきた。
どう答えようか、それともやはり無言を貫き通そうかと考えていたら遥が先に口を開いた。

『ねえ、こういうのはどう?今は付き合えなくてもいつかは付き合う気なんでしょ?だったら先に社内で噂流してあげるわよ。
沙弓には社外にちゃんと相手がいるってね。
そしたら南尾さんとの噂なんてすぐに消えるでしょ』

そう自慢気に話す遥に陽人は一瞬だけ思考を巡らせるとフッと口角を上げた。
社内間だけでの噂ならお互い支障はないだろうし、沙弓の相手がShineのハルトだとは誰も思いもしないだろう。
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