二人を繋ぐ愛の歌
「それで?こんな所でわざわざ越名さん達の話を出すってことは、何か言いたいことがあるんですよね?」

「そうなんだけど……相変わらず現場では他人行儀だよねー」

「公私混同はしたくないですからね」

「公私混同してライブでプロポーズした勇人に聞かせてやりたい言葉だな」

ケラケラと笑っている拓也の肩越しに話題の張本人である勇人の姿が見えて目が合った。
爽やかに見えるアイドルスマイルを浮かべて会釈するも、勇人は他人が見ても分からないほど微妙な加減で眉を潜めるだけだった。

「どう思います拓也さん。
後輩アイドルがトップアイドルに会釈しても、怪訝な表情を浮かべられただけなんですけど」

「いや、それハルト君が如何にもアイドルな笑顔を浮かべたからでしょ」

「如何にも何もアイドルなんですけど」

「そう言うことじゃなくて……」

拓也が何か言おうとしたが丁度収録の時間になったようでスタッフの動きが慌ただしくなり、出演者は位置につくように声がかけられた。

「ハルト君、収録後に少しでいいから時間頂戴」

「え?」

こちらに向かってくるユウナに気付くと、拓也はハルトに小声で耳打ちしてから勇人の元へ去っていった。
眉を潜めて拓也の後ろ姿を見ていたらユウナにグイッと手を引っ張られた。

「ハルト、早く位置につこう!あのね、さっきスタッフさん達に聞いたんだけど……」

グイグイと引っ張りながら先程スタッフ達と話していた内容を面白おかしく説明してくるユウナの話を軽く聞き流しながら、ハルトは未だに拓也の方へと視線を向けたままなのだった。
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