二人を繋ぐ愛の歌
『私だって、少しでも長く陽人に会いたい……』

絞り出すような声の沙弓に愛しさが募る一方で、陽人は目を閉じて気持ちを落ち着かせるとゆっくりと目を開けた。

「ん……じゃあ土曜日に沙弓のマンションまで迎えに行くから一日デートしよう。
どこに行きたいかとか何をしたいかとか考えといて」

『えっと……何もしなくていいし、どこにも行かなくていいからお家デートはどうかな……?』

「家?」

思ってもいなかった沙弓の提案に思わず聞き返してしまった。

『あ!違うの!その、違くはないんだけど……!』

「沙弓、落ち着いて。
俺は家でもいいけど沙弓はいいの?どこか遊びに行ったり買い物行ったりとかさ」

『うん、それはいいかな……。
陽人のこと疲れさせるの嫌だし、元々アクティブに出歩くタイプでもないから……。
でも、それだと陽人はつまらないかな?』

それが沙弓の本心からくる言葉かどうかは分からなかったけれど、何よりもまず陽人の体調を心配しての提案だったことを察して肩を揺らして笑うと、それを察したらしい沙弓が怒った。

『陽人っ!!もう、また笑ってるっ!!』

「ごめんごめん、俺も家でいいよ。
俺のとこだと実家で両親いるから、沙弓のとこでもいい?」

『あ、うん!大丈夫!』

「そう?じゃあ楽しみにしてる」

それから暫く雑談をしてから電話を切ると近くにあった鏡が目に入り、陽人はいつの間にか口角が上がって嬉しそうに微笑んでいた自分に気が付いて片手で口を覆った。

「……締まりのない顔」

そう小さく呟いて仄かに頬を赤くしながらそのまま暫く鏡を見てみるが、そんな顔をさせるのは沙弓だけだと思うと、まあいいか。と思えた。
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