二人を繋ぐ愛の歌
「こ、これでどうかな……?」

ピカピカとまではいかないとしても、ここ数年で一番綺麗に片付けられた部屋をぐるっと見回した。
テレビ台には埃が溜まっていないことも確認したし、水回りも大丈夫。

朝から来るということだったから、一応三食分の食材も用意した。

遥のアドバイスを受けて、小さいけれど観葉植物を置いたらそれだけで部屋が爽やかな印象になった気がする。

この一週間、少しずつ模様替えをしたこの部屋はついに今日、陽人を迎えることとなるのだ。

「ど、どうしよう……ドキドキして眠れなかった……」

陽人をお家デートに誘ってからの一週間、沙弓は気が気ではなかった。
それこそ、職場でもぼんやりしていることが多くて周りに心配されたり、遥にこっそり書類仕事を押し付けられてても気付かなかったり……。

それもこれも、何ヵ月ぶりにもなる陽人との再開のせいなのだと分かっているのにどうしようもない自分がいる。

小さめのソファに座り近くに置いてあった少し大きめのぬいぐるみを少し強めに抱き締めた。

……これも陽人が来るまでには隠しておかないと。

ここ最近手に入れたばかりのぬいぐるみを見つめてからゆっくり時計に視線を移す。

現在の時刻は5時45分。
待ち人を待つにはまだ早すぎる時間だった。
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