二人を繋ぐ愛の歌
「真未さんっ!秋村さんいますか!?」

closeの札が出ていて閉店準備中だったのは百も承知で半ば駆け込む勢いでパン屋のドアを開けると、驚いた様子の真未がすごい勢いで振り返り何度か瞬きをしながら沙弓を見ていた。

「沙弓ちゃん?どうしたの?朝陽は陽人君達の用事があるらしくて今日は店にいないけど……」

「いない……?」

駅からここまで、はやる気持ちを抑えきれずに走ってきたのに、目的の人物が不在だったということに沙弓は思わず脱力してその場に座り込んでしまった。

「だ、大丈夫?朝陽がいなくて悪いけど、時間があるなら少し休憩していく?」

「……すみません、お言葉に甘えてさせてもらっていいですか?」

社会人となってから街中を走るなんてことはなかったので、運動不足の沙弓の足は疲れきっていた。
真未からかけられた優しい言葉に迷惑になることを理解しながらも、少しだけ休憩させてもらうことにした。

暫くして真未はコーヒーを二つ持ってくると一つは沙弓に、もう一つは沙弓の向かい側に置いてそこに腰を下ろした。

「私も一緒に休憩させてもらってもいいかしら?」

優しく微笑む真未に沙弓は頷くと、淹れたての温かいカップに手を伸ばした。
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