二人を繋ぐ愛の歌
「それで、これからは君が弁当の配達人になるの?」

「いえ、叔父さん……じゃなくて、いつもの人が動けるようになるまでです」

そう話しながら男性は大量の弁当を机に乗せるのを手伝ってくれていた。
並べ終わると、ただこれだけの動作でも結構腰にくるのを感じながら小さく一息ついた。

「手伝っていただいてありがとうございました」

「どういたしまして」

にっこりと、まるでアイドルのような笑顔で微笑まれて沙弓はほんの少しだけ驚くがすぐに気を取り戻し男性に会釈すると直ぐ様台車を押して部屋を出た。

「……テレビ局ってすごい。
スタッフの人でもあんな風に芸能人みたいな笑顔が出来るんだ」

長い廊下を軽くなった台車を押しながら小さく呟き、たまにすれ違う人に来た時と同じように会釈して先程の男性のことを思い出しながら歩いていた。

ーーでもあの人、どこかで見たことがあるようなないような……。

そう思ったのだけれど基本的に他人に興味がなく顔と名前を覚えられない沙弓は、気のせいか。と一人自己完結してエレベーターに乗り込んだ。
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