二人を繋ぐ愛の歌
「本当、朝陽は聞き方が悪いわね。
普通に質問すればいいのに心理戦みたいな雰囲気出さないで」

「いやー、わざとじゃないんだけどね」

「わざとじゃなくても相手の反応を見て楽しんでる時点でたちが悪いわよ。
嶋川さん、ごめんなさいね?」

「い、いえ、大丈夫ですっ!」

心底呆れたと言った様子の真未に沙弓は慌てて首を振る。
どうやら朝陽は思わせ振りな表情や話し方をして相手を混乱させ、墓穴を掘らせて自滅させるのを見るのが楽しくてよく相手を惑わせるらしい。

……何て言うか、いい性格をしている。

「単純にハルト君とは前から個人的に知り合いなのかって聞きたかっただけなのよ」

「……奥さんの前で何ですけど、本当に回りくどいですね。
あ、でも胡散臭そうな笑顔とか白々しい態度とかは陽人に似通ってる気がします」

「そうなのよ!ハルト君のご両親のお仕事の都合上、朝陽が面倒見ることが多かったみたいで自然と性格が似てしまったみたいで……」

「ああ……そうなんですね」

「……二人とも、結構酷いよね」

真未の言葉に納得して頷くと、朝陽は苦笑していた。
それ以降の話は真未が間に入って朝陽の話し方や表情を監視していたのもあって、割りとスムーズに話せたと思う。

結局朝陽は以前、陽人のプライベート用のスマホに登録されていない番号……沙弓からのメッセージが届いた時に一緒にいて、その番号の持ち主が沙弓じゃないのかと気になっただけのようだった。
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