二人を繋ぐ愛の歌
「っ……陽人……?」

乗せられた大きな手に沙弓はピクッと反応してしまったが、それに気付いているはずの陽人は気にすることなく乗せた手をどけようとしない。
それどころか、少し力を込めて握られ沙弓は胸が早鐘を打つのを感じた。

「ねえ、それを聞いてどう思った?」

「そ、それって……どれ?」

「俺がわざとミスしたように見せかけてまで沙弓と一緒に弁当食べたかったって話。
ついでに言えば、もう知ってるのに敢えてみんなの前で改めて沙弓の連絡先聞いた理由も朝陽君なら気付いてて話してるんだろうな……。
それも含めてどう思った?」

そう聞かれて沙弓は戸惑いつつハンドルから手を離して陽人の手から逃れようとするけれど、陽人はそんな沙弓の行動を予測していたかのように動き、あろうことか指を絡めて恋人のような繋ぎ方をしてきた。

「っ……陽人、手、離して……」

「考えてみてよ。
何で俺がそんなことしたのかって」

「分かった!考えてみるから!!だから手、離してっ!」

家族以外の異性にこんな風に触れられたことなんてない。
こんな熱がこもった眼差しを向けられたこともない。

ドキドキして混乱しそうになる思考をなんとかかき集めて冷静を保とうとしているのに、陽人がふっとイタズラに微笑んだかと思うとまだ繋がれていた手を引き沙弓の手の甲に己の唇を押し当てた。

「っ……!?」

「ほら、信号変わったよ。
早く行かないと」

パッと手を離され、沙弓は慌てて前を向くと強くハンドルを握り車を急発進させた。

「ちょっと運転荒くない?」

「うるさいっ!今冷静でいられないから黙ってて!」

「俺のこと少しは意識した?」

「っ……今すぐ降りてっ!」

「いや、無理だから」

楽しそうに笑っている様子の陽人の口付けた手の甲と熱が集まった頬がとても熱くて、今、熟れたトマトのように真っ赤になっているのが自分でも分かるほどだった。
今が夜で暗くて良かったと思いながら、沙弓は騒がしく鼓動する心臓を持て余しながら陽人の言動に激しく戸惑っていた。
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