二人を繋ぐ愛の歌
「テレビでも毎日出てるし、雑誌でもたくさん出てるのよ?見たことくらいはあるでしょ?」

「多分だけれど何かの番組で見たことはあるかも……」

そう言うと遥に大きな溜め息をつかれた。

何度も言うがテレビに出てる人はみんな同じ顔に見えるのだから、違いや見分け方を教えてほしい。
と割りと本気で思いながらパンフレットから視線を上げた。

「それで、このパンフレットがどうかしたの?」

「滅多に取れないチケットを取って行ってきたの!握手会の抽選にも当たって、ハルト君とユウナちゃんと触れ合って会話も出来たんだよ!!って喜びを分かち合いたかったの!」

「えっと、それはなんと言うか……。
喜びを分かち合えなくてごめんね?」

申し訳なく苦笑すると、遥は何やら自分のスマホを操作してワイヤレスイヤホンを差し出してきた。

「はい、これ耳に当てて!」

「え?」

「顔と名前を覚えられない沙弓でも歌くらいは覚えられるでしょ?まず歌から覚えて!!」

そしてファンになって一緒にライブ行くよ!と期待を込めた眼差しを向けられて、沙弓は渋々イヤホンを耳に装着した。
流れてくる音楽はどれもどこかで聞いたことのある曲で、あ、この曲好きな曲だ。と沙弓でも知っている曲もあった。
< 8 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop