二人を繋ぐ愛の歌
「……元気出た?」

「え?」

「さっきの撮影で“疲れてる?”って聞かれてたから……。
でも、私には疲れてると言うよりは何か気になることがあって集中しきれてないように見えたんだけど……当たってる?」

そう聞きながら見上げると、ハルト前髪のかかっていないよく見える瞳を一瞬丸くすると肩の力を抜いて小さく微笑みながら頷いた。

「当たってる……。
すごいね、俺の事よく見てくれてるんだ?」

「た、たまたまそう思っただけ!」

赤くなった顔を隠すために沙弓はプイッと顔を背けたが、陽人の言動に対しての戸惑いを全く隠せていない。
そんな沙弓にハルトが一歩近づく気配がすると同時に、誰かが沙弓を呼ぶ声が聞こえてきた。

「嶋川さん!」

「……南尾さん?」

「そろそろユウナさんの撮影が始まるから知らせに……って、ハルトさん……?」

ハルトが一緒にいると思わなかったのか南尾はハルトがいるのに気付くと驚いたようだった。

「……嶋川さんはハルトさんとも仲が良いんだね。
驚いたよ」

「え、えっと……仲が良いと言いますか、たまたま同じ自販機に飲み物買いに来て、私が買った物を笑われてただけですよ」

そう言って持っていた変わり種の缶を見せると南尾はどこか納得していなさそうな表情をしながらも話を合わせた。

「ああ、それ美味しいよね」

「え、南尾さんこれ飲んだことあるんですか?」

「妹が飲んでたのを貰ったことがあってね。
俺には少しだけ甘かったけど」

「確かに男の人には甘いかもですね」

そう穏やかに話す二人の様子をハルトが感情を持て余した様に見ていることに気付かなかった。
ふと沙弓は腕時計で時間を確認すると、ユウナの撮影時間がかなり迫っているのに気付いて慌ててプリンを飲み干した。
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