冬の王子様の想い人
それでも……冷たい人ではないと思う。
そっと昨日掴まれた左手首に視線を落とす。そこには跡もなにも残っていない。
触れる時、力をきちんと加減してくれていたのだろう。不機嫌そうでイラ立っていたけれど、脅されたり、無理強いはされなかった。
言葉や口調はきつくても、触れる指は優しく、仕草にも冷酷さは感じなかった。
羞恥と緊張で居たたまれず、言われた言葉にカッとなって逃げ出してしまったけれど、不思議と恐怖は感じてなかった。
一連の出来事を思い出すと、なぜか胸の奥がざわめいた。
「ちょっとナナ、聞いてる?」
急に黙り込んだ私を訝しむように梨乃が声をかけた。
「あ、うんっ聞いてる!」
「おはよう、ショートホームルーム始めるぞ! 席について」
大きな音を立てて教室のドアが開き、タイミングよく担任の先生が教室に入ってきた。
思い思いに話していたクラスメイトたちは自席に一斉に戻り、そっと胸を撫でおろした。
そっと昨日掴まれた左手首に視線を落とす。そこには跡もなにも残っていない。
触れる時、力をきちんと加減してくれていたのだろう。不機嫌そうでイラ立っていたけれど、脅されたり、無理強いはされなかった。
言葉や口調はきつくても、触れる指は優しく、仕草にも冷酷さは感じなかった。
羞恥と緊張で居たたまれず、言われた言葉にカッとなって逃げ出してしまったけれど、不思議と恐怖は感じてなかった。
一連の出来事を思い出すと、なぜか胸の奥がざわめいた。
「ちょっとナナ、聞いてる?」
急に黙り込んだ私を訝しむように梨乃が声をかけた。
「あ、うんっ聞いてる!」
「おはよう、ショートホームルーム始めるぞ! 席について」
大きな音を立てて教室のドアが開き、タイミングよく担任の先生が教室に入ってきた。
思い思いに話していたクラスメイトたちは自席に一斉に戻り、そっと胸を撫でおろした。