冬の王子様の想い人
3.王子様と保健室
六月も半ばになり、気温はぐんぐん上昇して湿度も高くなり、ムシムシした日が続いている。
今はまだ晴れている日が多いが梅雨入りはすでに宣言されている。
混みあう朝の通学電車。
いつも通りの時間の電車に押されながら乗り込むと雪華が反対側の扉近くに立っている姿が目に入った。
隣には楠本くんの姿も見える。
私の最寄り駅のふたつ先の駅がふたりの最寄り駅だと先月教えてもらったばかりだ。
長身のふたりは周囲から頭ひとつ分飛び出している。
私に気づいた雪華が目の前の乗客を器用に避け、私の背中に長い腕をまわし自身に優しく引き寄せた。
トンと一瞬、制服のシャツの胸元に頬が当たる。
「おはよう、ナナ」
頭上から穏やかな声が落ちてきて、扉の近くに誘導された。真正面に雪華が立ち、まるで身体で囲われているみたいだ。
ちなみに背中に触れる扉は私たちの高校の最寄り駅まで開かない。
「お、おはよう、雪華……楠本くん」
「おはよ、ナナちゃん」
楠本くんは結局私を下の名前で呼ぶと決めたらしい。
「本当、心配性だな」
ククッとおかしそうに声を漏らす楠本くん。
「……うるさい、桜汰。ナナを心配するのは当たり前だろ」
元々この車両には私と梨乃が乗車していた。けれどなぜか今月に入ってこのふたりまで乗車するようになってしまった。
今日親友は日直のため、一本早い電車に乗って登校している。
今はまだ晴れている日が多いが梅雨入りはすでに宣言されている。
混みあう朝の通学電車。
いつも通りの時間の電車に押されながら乗り込むと雪華が反対側の扉近くに立っている姿が目に入った。
隣には楠本くんの姿も見える。
私の最寄り駅のふたつ先の駅がふたりの最寄り駅だと先月教えてもらったばかりだ。
長身のふたりは周囲から頭ひとつ分飛び出している。
私に気づいた雪華が目の前の乗客を器用に避け、私の背中に長い腕をまわし自身に優しく引き寄せた。
トンと一瞬、制服のシャツの胸元に頬が当たる。
「おはよう、ナナ」
頭上から穏やかな声が落ちてきて、扉の近くに誘導された。真正面に雪華が立ち、まるで身体で囲われているみたいだ。
ちなみに背中に触れる扉は私たちの高校の最寄り駅まで開かない。
「お、おはよう、雪華……楠本くん」
「おはよ、ナナちゃん」
楠本くんは結局私を下の名前で呼ぶと決めたらしい。
「本当、心配性だな」
ククッとおかしそうに声を漏らす楠本くん。
「……うるさい、桜汰。ナナを心配するのは当たり前だろ」
元々この車両には私と梨乃が乗車していた。けれどなぜか今月に入ってこのふたりまで乗車するようになってしまった。
今日親友は日直のため、一本早い電車に乗って登校している。