溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

え、あ、そうだったんだ……。

てっきり彼女のものだと思ってた。

それを聞いてものすごくホッとしている私がいる。

いやだ、どうしてこんな気持ちになるの。

篠宮先生がトイレに立ったすきに、拓さんがひそひそ声でいろいろと過去の話を聞かせてくれた。

「修ちゃんが医者になると言い出したときは両親も祖父母も大反対でね。跡継ぎとして期待されていた分、大変だったのよ。ほら、あたしがこんなでしょ? 本来なら跡継ぎはあたしなんだけど、両親には毛嫌いされているのよ」

ヘビーなことを気さくに話してくれるから、軽い気持ちで聞いていた。

「反対を押し切って海外に飛び立った修ちゃんは立派なドクターになって帰ってきた。両親も今じゃ認めざるを得ないみたいだけど、本音としては跡を継いでほしいと考えてるわ」

「そうなんですか。ご実家は、どんなことをされてるんですか?」

「まぁ、修ちゃんったらなにも話してないのね。簡単に言えば高所得者向けの賃貸業よ。都内の一等地と呼ばれる土地やタワーマンションやオフィスビルの所有者なのよ。でもそれはあくまでも副収入で、本業はホテル経営なんだけどね」

あっけらかんとしながら肩をすくめる拓さん。

聞けば拓さんと篠宮先生の父親は全世界に名の知れた超有名な一流ホテルの経営者で、拠点の数も世界一のホテル王なのだとか。

思っていた以上にスケールが大きくて、さらに世界観のちがいを突きつけられた。

こうも世界がちがいすぎると、絵空事のように思えてくる。

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