溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
いくら待ってみても返ってくるはずの返事がなく、不思議に思って恐る恐る顔を上げる。するとなんとも言えない表情で固まっている篠宮先生がまっすぐに私を見下ろしていた。
「あ、あの?」
「ずるいな」
「え?」
「今そんなことを言うのはずるい。不意打ちすぎるだろ」
照れたように頭をかく姿に、大きく胸を揺さぶられる。いつも自信たっぷりで、どんなときでも澄まし顔だった篠宮先生が明らかに動揺している。
「お、大げさですよ」
そうは言ったものの、私だって緊張してる。目の前の篠宮先生にドキドキしっぱなし。やけに心臓の音がうるさくて、すぐそばにいる彼に聞こえてしまうのではないかと不安になる。
アルコールのせいで身体が火照り、余計におかしくなりそう。
「柚」
ワイングラスを持っていないほうの手をそっと私の頬に添えて、熱のこもった眼差しで見下ろされた。
ゆっくりと近づいてくる顔から目が離せなくて、それは一瞬の出来事だった。唇に柔らかい感触がして、それが篠宮先生の唇だということはすぐにわかった。