溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「あ、そういえば噂で聞いたんだけど」
爽子はそう言って周囲をキョロキョロ見回したあと、身を乗り出して向かい側に座る私を手でチョイチョイと手招きした。
「どうしたの?」
「うん、あのね。うーん、でも柚に言ってもいいものなのか迷うわね」
「そこまで言っといて、言わないのはなしよ。気になるじゃない」
「そうよね」
やたら真剣な表情で私の耳元に唇を寄せる爽子。
「柚の元彼、柊製薬のお嬢様に婚約破棄されかかってるらしいよ」
「えっ!?」
こ、婚約破棄?
「どうして?」
「院内の看護師やクラークにも手を出してたって話よ。それがお相手にバレて、破談にされかかってるとか。ま、噂だから信憑性に欠けるけど、相当遊んでいたのは事実みたいね」
私だけではなく色んな人に手を出していたなんて、呆れてものも言えないってまさにこのこと。
「もしそれが本当なら、最低ね」
もう私には関係のない人だけれど、同じように弄ばれた女性の気持ちが痛いほどわかる。
だからこそ、許せない。絶対に。
「私も今の彼氏がもし浮気してたら絶対に許さない。女の敵よ」
珍しく爽子が声を荒げた。
それに同意するように力強く頷く。