溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

天音さんはその女性と面識があるのだから、私じゃないことはわかるでしょう?

「天音さんは女性の顔をはっきり見たわけじゃないんだ。帽子を目深にかぶって、はっきりとは見えなかったらしい」

「それなら、私だっていう証拠はないですよね?」

「まぁ、そうなんだが……」

そこまで言うと院長は言葉を濁した。なにかその後に続く理由がありそうだ。

だけどおかしな話であることは明白で、一方的に私だと決めつけるような言い方をされなければいけないのか納得がいかない。

「当の宮本くんが、心当たりのある女性はきみしかいないと言うんだ」

「…………」

驚いて言葉も出ないとは、まさにこのこと。

心当たりのある女性は私しかいないですって?

優が私を疑っている?

どうして?

頭が真っ白になって、なにも考えられない。

『俺の婚約者にとんでもないことをしてくれたな』

『俺への恨みからだろうが、きみのしたことは許せない』

『覚悟しておくんだな』

ふと以前の優の言葉が蘇った。

あのときはなんのことを言っているのかわからなくて気にも留めていなかったけれど、こういうことだったのか。

腑に落ちたけれど、納得なんてできず胸の奥底からカァッと怒りの感情が沸き起こった。

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