溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「ええ、だいぶ楽ですよ。今はちょっと動いた時にピリッとするぐらいで」
「そうですか、日々よくなってきていますね。もう少しで退院も見えてきますよ」
「本当ですか?」
山田さんは身体を震わせ笑顔を浮かべる。
「日下部さん、実はね来月末に娘の結婚式があるんですよ」
「それはおめでとうございます」
「当日休めるように前倒しでバリバリ仕事してたら、無理がたたったのかこんなことになっちまって……でも、これで希望が見えてきたな」
「あまり無理はしないでくださいね。山田さんは真面目だから、少しくらい手を抜くことも覚えないと」
「はっはっ、俺が真面目だって? 妻が聞いたら、一番に否定するよ」
和やかなムードが漂う病室。回復過程にある患者さんとの穏やかなこの時間が一番好きだったりする。
こうしていると、さっきの出来事が夢の中のことみたい。思い出すと気分が沈み、浮上できなくなりそうになる。
「あ、これはこれは篠宮先生」
コンコンとノックの音がしたかと思うと、主治医の篠宮先生がやってきた。
ドキッと変に激しく高鳴る鼓動。落ち着かなくてそわそわする。
「では、私はこれで失礼します」
軽く会釈し病室をあとにした。