溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
ひとりでも味方がいてくれることは、ものすごく心強い。気を取り直して夜勤業務に取りかかる。
まずは夜の点滴の準備だ。薬局から上がってきた輸液ボトルを患者さんごとに処方箋内容にまちがいがないかチェックしていく。
ひと通りチェックが終わったところで今日の当直医の確認。
「あれ、今日の当直って篠宮先生から変更になってますね」
近くにいた松浦さんに尋ねる。一カ月の予定がすでに決まっているけれど、どうやら今日は緊急で変更になったようだ。
「篠宮先生、今日からシアトルに一週間出張なんですって。なんでも、向こうの学会で症例発表するそうよ。日にちを一日勘違いしていて、それで急に変更になったってわけ」
「そうなんですか」
出張なんだ。ホッとしたような寂しいような、よくわからない複雑な心境。
「症例発表の論文をまとめるのにここ最近特に忙しかったみたいで、ろくに寝てないって話よ」
「そう、なんですか……」と小さく返事をする。
忙しいにも関わらず、篠宮先生は私を誘って会っていたんだ?
寝る暇もないくらいだったなんて、今初めて知った。相当無理をしていたんじゃないだろうか。
「真面目よね、篠宮先生って。爽やかで気さくな人だから女性にモテるけど、脇目も振らずに仕事一筋って感じだし」