溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
夜勤明けの朝は身体がダル重い。でもこれで帰れると思うと気分は爽快で清々しい。
それでも今日だけはそんな気分にはなれなかった。
朝になり再び柊会長が乗り込んできたと聞かされたからだ。今日はひとりだったらしく、私は夜勤帰りに再び師長に呼び止められた。
ただ今日は院内にあるミーティングルームで待機しているため、会長とは顔を合わせていない。昨日同様たいそうご立腹らしく、またもや院内はざわついている。
製薬会社の会長が私情で大学病院に乗り込んでくるなど、院長と会長が昔ながらの顔なじみで仲がよかったいうことを考慮してもありえないことだ。
それは会長だって十分理解しているだろう。それなのにそこまでするということは、よっぽど天音さんのことを想ってなのか、はたまた他に理由があるからなのか。
「失礼するわね」
そこに現れたのは師長だった。渋い表情を見て、嫌な予感しかしない。
「日下部さん、私はあなたを信じているし、あなたがしたとは思っていない。だけど柊会長はそうは思っていないようで」
師長ははぁと大きなため息を吐いた。
この様子からすると、今日もまた院長室で怒鳴り散らしているんだろう。