溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
緊張から胃がキュッと縮む感覚がして、あれだけ覚悟を決めたはずなのに足がそこに張り付いたかのように動かない。
それどころか震えているなんて、情けないったらありゃしない。
固まっているとエントランスに向かって優が歩いてきた。そして、私の姿を見て驚いた表情を浮かべる。でもすぐに「くると思ってたよ」とバカにしたように鼻で笑った。
不快な笑顔に嫌悪感がこみ上げる。
「私になんの恨みがあるの?」
できるだけ感情が表に出ないようにしたつもりだった。けれど、絞りだした声は震えていて、怒りが滲み出ている。
「それはこっちのセリフだ。人の婚約者にみっともないマネをして、いったいどういうつもりだ?」
「私じゃない、誓ってそんなことしないわ。するはずがないでしょ。それなのに勝手な憶測でものを言わないで」
「事実を言っているんだ。正直、ここまで執念深い女だと思わなかったよ。でもまぁ、こんなことで俺たちの結婚が破談になったりはしないがな。それでも柊製薬に負い目ができたのはたしかだ。ったく、余計なことをしてくれやがって」
ちっ、と舌打ちまでして私を睨む冷たい瞳。
ダメだ、会長同様なにを言っても聞いてもらえない。