溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

「それに、実際俺に会いにこんなところまできているじゃないか。ちがうって言われても信じられないな」

「そ、それは」

身の潔白を証明したくて、会いたくもないのにわざわざきたのよ。

そう言おうとしたけれど、優の顔を見てると言葉が続かなかった。

悔しい、ものすごく。怒りがふつふつと湧いて、いつの間にかきつく拳を握っていた。爪が食い込んで痛いけれど、今はそれどころじゃない。

「あなたに散々傷つけられて、正直言って恨んだりしたこともある。でも私じゃない。あなたを恨んでる人が他にいるのよ」

「なんとでも言え。誰がお前の言葉なんて信じるかよ」

「……っ」

「ストーカーとして警察に通報されたくなければ、さっさと帰るんだな」

悔しくて苦しくて、喉の奥がカーッと熱くなる。

どうしてここまで言われなきゃいけないのだろう。

涙が溢れそうになってグッと歯を食いしばった。そして彼の顔も見ずに踵を返す。

後ろでフッと笑われた気がしたけれど、振り返ることはできなかった。

< 145 / 229 >

この作品をシェア

pagetop