溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

ガラガラガラと古めかしい音を立てながら引き戸が開く。

「へい、らっしゃい。おー、垣内さん。久しぶりだなっ」

「退院したんだって? 回帰祝いにきてやったぞ」

「お、そりゃどうも。空いてるとこに座ってくれ」

大衆食堂の一番奥の隅っこのお座敷の上、三角座りで膝の間に顔を埋める私。

「ちょっと、柚。お客さんがきたんだから挨拶ぐらいしなさい」

お母さんにそうたしなめられ、渋々ながらもゆっくり顔を上げると顔なじみの常連さんがにこやかに私を見ていた。

「こんにちは」

「久しぶりだなぁ、柚ちゃん。見ない間にきれいになっちまって」

垣内さんはこの辺でも有名な人で、ここら辺り一帯の土地を所有している大地主さんだ。ここから徒歩ですぐの近所に住んでおり、垣内さんの息子の真也(しんや)とは生まれた時からの幼なじみ。

野球が大好きで、小学生の頃から坊主で野球少年だった真也。高校までずっと一緒で大学もお互い都会に出たけれど、上京してからは忙しくてほとんど会っていない。

地元に帰ってくると懐かしくてつい真也に連絡してたけど、さすがに今日はそんな気分にはなれずにずっと引きこもっている。

「柚ちゃん、いい人はいるのか? いないなら、紹介してやるよ」

「ダメだダメだ、柚には決まった人がいるんだから」

「え? そうなの? 柚」

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