溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「そうだ、俺、来年結婚するんだよ」
もう何杯目になるかわからないビールジョッキを傾けながら、真也は残りを一気に飲み干した。
突然の爆弾投下に、私やその場にいたお母さん、お父さん、さらには真也を知るお客さんまでもが驚きの声を上げる。
「おめでとう、真也くん!」
「今度連れてこい。飯食わせてやるからよ」
「あはは、うん、明日か明後日にでも連れてくるよ」
「まぁ、それは楽しみだわ!」
うちの両親は真也のことを息子同然のようにかわいがっていて、嬉しそうな表情を浮かべている。それは他のお客さんも同じで「あの野球少年だった真也がなぁ」と感慨深くしみじみしていた。
それにしても、あの真也が結婚かぁ。
なんだかちょっと寂しいような気もするけれど、もちろん私も自分のことのように嬉しい。
「そういえば柚はいつ東京に戻るんだ?」
「え、うーん、特に決めてないけど、でもまだ二、三日はいるかな」
今日で滞在五日目だけれど、私に与えられた休みは十日でまだ半分も過ぎていない。
「俺もまだしばらくはこっちにいるから、彼女紹介するよ」
「うわぁ、どんな人なのか楽しみー!」
「忙しい人だけど、芯が強くてすっごいいい子」
真也はそう言って幸せそうに笑った。彼女を想っているのか、見ているこっちが照れくさくなってくるほどの優しい微笑みだった。