溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
オペの日取りが決まり、入院に向けて準備していた矢先の悲報だった。入院前日に脳梗塞で倒れ、帝都大に救急搬送されてきたのだ。
処置を施したが意識不明のまま救外のICUに緊急入院となった。今現在も意識が戻っておらず、いつ目を覚ますかわからない状態。
家族もひどく動揺しており、目を覚ます気配のない患者に日々憔悴していった。脳外のスペシャリストの先生の見立てでは、自発呼吸がなく脳波にも反応がないことから目を覚ます確率はかなり低いとのことだった。
人工呼吸器の補助がなければ生きられない、いや、人工呼吸器に生かされている状態。オペがどうこうの話ではなくなった。今現在、命が消えかかっているのだ。
そんな状態が続き、ついさっき、消化器外科で担当だった俺と柚、脳外の医師と家族で行われたカンファレンスで脳死判定がくだされた。
泣き叫ぶ家族の姿を見て、柚は必死に涙を我慢していた。
「なんだか他人事みたい……冷たいんですね、篠宮先生って」
予想していなかった返答に面食らう。