溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
天音さんの目に徐々に涙が浮かんでくる。天音さんは肩にかけた高級ブランドのバッグからハンカチを取ると、それを目に当てた。
「ごめん、なさい。私のついたウソで、まさか、こんなことになるなんて思ってなかったんです……」
膝からペタンとその場に崩れ落ちる天音さんは、声を押し殺して泣き出した。
「あ、天音さん……大丈夫ですか?」
心配する必要なんて微塵もないのかもしれない。彼女がウソをついたせいで、私は疑われてここにいるのだから。
でも目の前で悲しそうに泣く天音さんを見ていたら、私の性格上放っておくことはできなくて、天音さんの背中をさすりながら「ゆっくり息して、落ち着いて」と声をかけた。
白いハンカチに涙の染みができていく。その間およそ数分だったと思うけれど、私は彼女の背中を撫で続けた。
「私、好きな人がいるんです……」
涙が落ち着いた頃、どう声をかけようか迷っていたタイミングで天音さんがまさかのカミングアウトをした。
「そ、それって、宮本さんではなくて?」
「いえ、ちがいます」
もう泣いてはいない、力強くてはっきりとした表情。
「宮本さんのことは、最初から好きではありません」