溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
なにから言おう、どう説明しよう、どこまで話そう。あまりの急展開に考えがまとまらない。
あれ?
でも結局、私たちはどうなったんだっけ?
エンゲージリングをもらいはしたけれど、付き合おうと言われたわけでも、結婚の約束をしたわけでもない。修さんはどういうつもりでいるんだろう。
私たちの姿を見た両親は嬉しそうに私たちを席へと案内した。
「今日は手伝わなくていいわ。その代わり、篠宮先生とうまくやりなさい」
お母さんが耳元でコソッと囁いた。『うまく』って、お母さんの目が本気で私は思わず苦笑する。
「篠宮先生、約束の土手焼きをぜひ食べてくれ」
「いいんですか?」
私たちはカウンター席に並んで座り、修さんはというとお父さんの言葉に笑顔で対応している。その横顔は、私が見てもわかるくらいに嬉しそうでホッとする。
「もちろんだ」
そしてあれよあれよという間にカウンターにたくさんの小鉢や大皿が並べられた。
お父さん自慢の土手焼きはもちろん、鯖の味噌煮に、大根の煮物、ポテトサラダに、和風ハンバーグ、そして鶏の甘酢あんかけは私の大好物だ。
「こんなに食べられないよ」
私がそう言っても、お父さんはガハガハ笑うだけだった。