溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「食え、もっと食って力をつけろ。そして多くの人の人生にしっかり寄り添え」
「もう、お父さんったら、なにを言ってるのよ」
いつもよりテンションが高く、にこやかなお父さん。
「篠宮先生がいなきゃ、今こうしてここに立っていられなかったかもしれない。助けられたんだよ、命ではなく、人生をな」
「なにキザなこと言ってるの」
呆れたように笑うと修さんは「ごもっともです」と、お父さんに合わせるように笑った。
「僕も医師という仕事は人の人生に寄り添うことだと思っていますから」
「お、なんだ。気が合うじゃねーか。飲め、食え。今日は俺のおごりだ」
「ありがとうございます」
お父さんの料理をふたりで食べる。修さんは終始大げさに反応してみせた。私の両親だからといって、そこまで気を遣うことはないのに。
やがて店内は他のお客さんで騒がしくなり、お父さんとお母さんの目も私たちから離れた。
「いいご両親だな」
「えー、そうですか? 口うるさいだけですよ」
「いつもこんなにうまい飯を食ってたんだろう? 羨ましくて仕方がないよ」
「普通ですよ、どこにでもある家庭料理ですし」
「その家庭料理の味を、俺はほとんど知らないんだ」