溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
過去との決着
目を覚ますと隣に愛しい人の姿があった。あれは夢だったのではないかと思ったけれど、お父さんのトレーナーを着てすやすや眠る修さんは紛れもなく本物だ。
左手の薬指に感じる違和感から、エンゲージリングがしっかり嵌められているのがわかって頬がゆるむ。
そしてすぐそばにいる愛しい人を見つめた。長いまつ毛に精巧な顔立ち。忙しいはずなのにきめ細やかできれいな肌は、私のものよりすべすべそうだ。眠っていてもとてつもないほどの色気が漂っていて、ドキドキさせられる。
あどけない寝顔が少年のようで、かわいらしい。
「ふふっ」
起こさないようにこっそり布団から出て階下へ向かう。お店の中ではすでに両親が忙しくバタバタと動き回っていた。
「おう、柚、早いじゃねーか」
見事な包丁裁きでネギを刻みながら、チラリと私に目を向けてくるお父さん。独特なネギの匂いと、お味噌汁のいい匂いが胃を刺激する。
「なんだか早く目が覚めちゃって。あ、なにか手伝うよ」
「もうすぐ朝飯ができるから座っとけ」
「でも」
「いいから。せっかく修先生もきてくれてるんだ、腕によりをかけないとな」
お父さんは相変わらず嬉しそうだ。
「お母さん、私にできることある?」
「大丈夫よ、座ってなさい」