溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
寂しそうにしつつもタイムリミットが迫っていたのか車は渋々発進した。大きく手を振っていると、角を曲がる直前にハザードランプが数回点灯する。『ありがとう』と伝えてくれる優しさに、思わず笑みがこぼれた。
「さーて」
お昼時でお店は今から混み合ってくる時間だ。大きく伸びをすると、いつも以上に気合いを入れて店内へ戻った。
よくよく考えてみると今日は土曜日で、個人客よりも家族連れのお客さんが多い。息吐く間もなく慌ただしく時間だけが過ぎて行き、ようやく一息つけたのは十四時を回ったところだった。
遅い昼食を食べ、店内にあるテレビで再放送のバラエティ番組を流し見していたその時。
ガラッと乱暴に引き戸が開かれる音がした。両親は近所で借りてる土地で家庭菜園をしており、この時間は家にいないことが多い。
「すみません、ランチ営業は終わりま……っ」
そこまで言いかけてハッとする。
「よう、久しぶりだな」
「す、優……どうして?」
スーツ姿で睨みをきかせながら仁王立ちしている彼は、明らかに私を恨んでいるような目をしていた。悪意しかこもっていないのがわかって恐怖を感じる。
「よくそんなのんきなことが言えるな。おまえのせいで天音が他の男と駆け落ちしたんだぞ!」