溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「えっ!?」
天音さんが駆け落ちした?
「しかも、これまでのことは全部自作自演だと抜かしやがった。どいつもこいつも、この俺をコケにしやがって。バカにするのもたいがいにしろっ!」
語尾を荒ぶらせながら激昂する彼は、いったいなにを言っているのだろう。どうして私が怒鳴られなければいけないの。怒鳴りたいのは私の方だわ。
血走った目で睨まれても、なぜか先ほどのように怖いとは思わなかった。我慢ができなくなって、口を開く。
「宮本さん、こうなったのは全部自分の責任でしょ? それに人をバカにしてるのは、あなたの方よ」
「ふんっ、相変わらずベラベラと生意気な女だ」
「どう思ってくれても構わないわ。もうあなたからの評価に怯える必要なんてないんだから。わざわざそれを言うためにきたの?」
「おまえのせいで婚約はパァになったよ。さぞかし気持ちいいだろう?」
この人は自分の非を絶対に認めようとはしない。誰かのせいにして、今まで生きてきたのだろう。微塵も自分が悪いなんて思っていない口ぶりだ。
呆れ果てて返す言葉が見つからず、きっとなにを言っても私の言葉は彼には届かない。