溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「ど、どうしてここに?」
帰ったはずじゃあ?
昼間だけど肌寒いのに、修さんの額には汗が浮かんでいる。急いできたのか、呼吸を乱し肩を上下させていた。こんなに必死な修さんの顔は初めて見る。
修さんは私を守るように背中に隠すと、優に向き直って冷ややかな視線を向ける。その背中には、とてつもないほどの怒りがにじんでいた。
「身勝手な理由で柚を傷つけようとするなんて、どういうつもりだ」
優に向かって放たれた言葉だとはいえ、背筋が凍るほどゾクッとする殺気を帯びた声に、私まで縮み上がりそうになる。感情的になるでもなく、落ち着き払った冷静さがあるにも関わらず、だ。
さすがに優もそんな修さんに言葉を失っている。
「嫌がる女性を脅して無理やりこんなことをするなんて、どうかしているんじゃないか」
「や、やだな、ちがいますよ。そんなことしてませんって。彼女がふらついたから、支えてあげただけです」
ヘラッと愛想笑いを浮かべて取り繕う姿に嫌悪感を覚えて、とっさに目をそらす。どうしてそんなでまかせが言えるのか、私にはわからなかった。
身体の震えが止まらず、手首にはくっきりと指の跡が残っている。