溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜

消化器外科に勤務する日下部(くさかべ) (ゆず)、二十六歳。

国立の看護大学を卒業してからナースになって四年目。

新人時代を過ぎて、私はこの消化器外科でも中堅ナースと呼ばれる立場になった。

中堅クラスになると新人の教育だったり、通常の業務に加えてのリーダー業務だったりと、やることがありすぎて毎日がめまぐるしく過ぎていく。

そんな毎日に置いていかれないように、日々ついていくのに精いっぱい。それでもここのところ、少し慣れて余裕ができたかなというところ。

とにかく看護師という仕事は、まともにお昼休憩も取れないくらい忙しくて、あっという間に一日が終わってしまう。

だけどその分やりがいはあるし、患者さんが元気になって退院していく姿を見ると嬉しくもなる。

「日下部さん」

私の肩を誰かが叩いた。

電子カルテのタブレットに集中しすぎていたせいで、不意打ちの出来事に思わず肩がビクッと揺れる。

とっさに振り返った私を見て、目の前の人はスッと目を細めた。

「ごめんごめん、ビックリさせたかな?」

「い、いえ、大丈夫です」

そこにいたのは青いスクラブの上から白衣を着て、首から黒い聴診器をぶら下げているエリート外科医の篠宮 (しのみや)(しゅう)先生。

大丈夫、なんの問題もなく普通に返事ができたはずだ。

この人に隙を見せてはいけない。

固くそう心に誓う。

< 2 / 229 >

この作品をシェア

pagetop