溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
消化器外科に勤務する日下部 柚、二十六歳。
国立の看護大学を卒業してからナースになって四年目。
新人時代を過ぎて、私はこの消化器外科でも中堅ナースと呼ばれる立場になった。
中堅クラスになると新人の教育だったり、通常の業務に加えてのリーダー業務だったりと、やることがありすぎて毎日がめまぐるしく過ぎていく。
そんな毎日に置いていかれないように、日々ついていくのに精いっぱい。それでもここのところ、少し慣れて余裕ができたかなというところ。
とにかく看護師という仕事は、まともにお昼休憩も取れないくらい忙しくて、あっという間に一日が終わってしまう。
だけどその分やりがいはあるし、患者さんが元気になって退院していく姿を見ると嬉しくもなる。
「日下部さん」
私の肩を誰かが叩いた。
電子カルテのタブレットに集中しすぎていたせいで、不意打ちの出来事に思わず肩がビクッと揺れる。
とっさに振り返った私を見て、目の前の人はスッと目を細めた。
「ごめんごめん、ビックリさせたかな?」
「い、いえ、大丈夫です」
そこにいたのは青いスクラブの上から白衣を着て、首から黒い聴診器をぶら下げているエリート外科医の篠宮 修先生。
大丈夫、なんの問題もなく普通に返事ができたはずだ。
この人に隙を見せてはいけない。
固くそう心に誓う。