溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「は、はは。お、俺は悪くない。悪くないんだ。悪いはずが、ないだろ?」
うつろな瞳でそう繰り返す優は、正常な思考で物事を考えられなくなっている。
「帰れ、二度と柚の前に姿を見せるな。金輪際、きみが接触することは許さない。もし次に見かけたら、容赦はしないから覚悟しとくんだな」
「くそっ」
そう吐き捨て、よたよたと足取り悪くこの場から離れて行く。椅子に躓いてバランスを崩しながらも、優は一度もこちらを振り返ることはなかった。
どうやら車できたらしく、乱暴にドアを開閉する音がした。エンジンを吹かせ、ものすごいスピードで去って行った。
そこでようやく肩の力が抜ける。一気に脱力して、ヘナヘナと床に崩れ落ちた。
「おっと、大丈夫か?」
そんな私の腰に腕を回して支えると、修さんは近くにあった椅子にゆっくり座らせてくれた。
「ありがとうございます、大丈夫です」
「無理はするな」
「い、いえ、本当に大丈夫です」
怖かったけれど、特になにかをされたわけではない。手首が今でも少し痛いけれど、血が出たりしているわけでもない。
「大丈夫なわけがないだろ?」
修さんは私の前に立ち、腕を伸ばしてそっと私を抱きしめた。