溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
私よりもそんなふうに言う修さんの身体が小さく震えていることに気づく。
「柚になにかあったらって思うと、怖くてたまらなかった。間に合ってよかったよ」
「修さん……」
本気で心配してくれたんだ。椅子に座ったまま、両手で力いっぱい修さんの腰に手を回す。そしてキツくギュッと抱きしめた。
「怖かったけど、修さんがきてくれたから……私は大丈夫です」
お互いの存在を確かめ合うように、しばらくの間抱きしめ合った。修さんの腕の中は温かくてホッとさせられる。
「これ、あいつが?」
手首にくっきり残った赤い跡を見て訝しげに眉を寄せる修さん。凍てつくような視線で、まっすぐに私の手首を凝視する。
「一発ぐらい殴ってやればよかった」
「なっ、ダメですよ」
「あいつの肩を持つのか?」
「修さんの手は人の命を救うためのものですから、私のために汚しちゃダメです」
大きくゴツゴツしたしなやかな手を、私は両手で優しく包み込んだ。
「こんなにも優しくて安心させられる手は他にありません。だから、大事にしてください。ね?」
ニコッと微笑み修さんの目を見つめた。どこか面食らったような表情で、バツが悪そうに視線を右往左往させる修さんの顔が徐々に赤く染まっていく。
「はぁ。敵わないな、柚には」