溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
観念したように吐き出された声には、どことなく甘い響きが含まれていた。
「どれだけ俺をドキドキさせれば気が済むんだ」
「え? ド、ドキドキ?」
「まったく」
そう言いながら唇を尖らせているけれど、その横顔はものすごくだらしなくゆるんでいる。けれどそれは一瞬で、すぐにキリッとした表情に変わった。
そして今度は私の手を優しく握り返してくる。
「これからは俺のやり方で柚を全力で守ってみせる。もう二度と怖い思いはさせない」
「で、でも、危ないマネは」
「安心しろ、俺のやり方でと言っただろ? 危ないマネはしないよ」
なにかしらの野望を秘めたような瞳に疑問が湧く。けれど修さんはそれ以上はなにも言わなかった。
時間が経ってふと冷静になると、もしかすると私はとんでもないことをしたのではないかと思い始めた。
「私、天音さんに余計なことを言ってしまったんでしょうか? だから駆け落ちだなんて」
私がけしかけるようなことを言ってしまったから、天音さんは行動に移したのかもしれない。他に手立てはいくらでもあったはずなのに、駆け落ちという道を選ばせてしまったのは私の責任なのではないか。